7月 132013
 

日本だけでなく、今や世界中で、シカ(草食大型動物)による生態系の破壊が進んでいるようです。
この大きな要因の1つに大型の捕食者、つまり、草食動物を食べる存在がいなくなったことがあげられます。

われわれ人間はヒューマンエラー的に、ただ肉食動物が草食動物を食べるから、数が抑制される…と思ってしまいがちです。
しかし、事はそんなに単純ではないようです。

以下、【】引用

【オオカミがいなくなったことがシカに与えた影響は、頭数よりも心理面においてのほうが大きかったようだ。

「…肉食動物というものは、被食者を食べる存在としてではなく、被食者の行動を抑制する存在としてより大きなはたらきをしていることに気づいたのだ」。そして、捕食者から解放されたことによる被食者の行動の変化は、食物連鎖の基盤を揺るがすほどの影響をもたらす。

「驚くかもしれないが、わたしたちが調べたことをよく検討すれば、誰でも、過剰なシカがもたらした問題をオオカミは確かに解決するし、場所によってはそれが唯一の解決策なのだと悟るだろう」】(P162)

ここの部分が、この本の本旨でしょうね。
尾瀬や多摩でも、シカによる食害に悩まされています。そこで、一部の有識者からは「オオカミの導入」を発案されています。
しかし、どこの国でもそうですが、大型の肉食動物の導入となると、二の足どころか、検討の余地すらないようです。

この本の優れたところは動物学的見地から「人間」というものを見ているところです。
人間というものも、そもそもは大型肉食動物にとって食べられる側の存在でした。つまり、人間は無意識的に、肉食動物を嫌忌する生き物なのです。
いわば、シカと同じ側にいるわけで、同じ側のものが敵対する側、つまり、肉食動物の繁栄に加担するいわれはありません。
そのような人間の動物学的な「恐怖心」にまで、掘り下げているのは素晴らしいですね。

それに加えて、実際問題としては、動物愛護団体や「ハンター(猟師)」との兼ね合いもあります。
動物愛護団体は、動物愛護の精神から自然をいじることに対して反対するのはわかるのですが、意外に猛烈な反対者がハンターなのです。
ハンターとしては、狩猟対象がわんさかいてくれた方が楽しめるので、このような人たちも肉食動物の導入には反対という、考えてみれば実に明快な理由があります。

日本の場合は、諸外国と狩猟の様相が若干違うかもしれません。
日本の猟師さんは、趣味でやっている人もいますが、駆除目的で農家の人が行っている場合が多いです。
ですから、農業・林業被害を考えれば、オオカミの導入に関して、猟師さんから猛反発を受けることはなさそうですが、その前に住民の人が首を縦に振らないでしょうね。

オオカミの狩りというものも、きちんと勉強しないとわからないものですね。
オオカミに限らず、肉食動物は草食動物の子どもや年寄り、病気やケガなどで弱った個体を狙います。
なぜなら、丈夫な個体の場合、反撃を受けてしまうからです。

シカのグループがあり、そこに弱った個体がいます。
オオカミに狩られれば、それによりそれ以上生きられません。つまり、それ以上食害は起こらないのです。
しかし、オオカミがいなければ、弱ったまま寿命が尽きるまで、何かを食べ続けます。
こんな単純なことが、農業・林業において、シカの食害を広げている一因になっているのかもしれません。

炭素時計
【炭素14は不安定な分子で、砂時計の砂粒が落ちるように、一定の速度で崩壊し続ける。生物が死ぬと、炭素14は宿主の体内から消えはじめ、5730年で半減する。化石の状態が良ければ、地球化学者は動物の死亡年代を4万年前までさかのぼって数100年の幅で知ることができる。】(P242)

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